特定非営利活動法人 Human & Animal Bridging Research Organization エイチ・エー・ビー研究機構

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ドクターインタビュー

第3回 HAB研究機構副理事長 寺岡慧

収録日:2017年6月3日

HAB研究機構副理事長 寺岡慧がヒト組織を研究に供するためのわが国の対応、外科手術の現場に協力を求めるための方策、HABの今後について語ります。

Part1:「ヒト組織を研究に供するためのわが国の対応について」
Part2:「外科手術の現場に協力を求めるための方策について」
Part3:「今後のHABについて」
※動画左上のメニューボタンをクリックすると、再生する動画を選択することが出来ます。

各動画の要旨は以下になります。
■Part1:「ヒト組織を研究に供するためのわが国の対応について」
死体解剖保存法の17条と18条に死後、摘出した標本の研究や教育用に利用することに関する規定が書かれています。
それには遺族の承諾というのが前提であるということと、承諾がある場合にはそれを標本として保存することができるということが書いてありますが、研究に関しては詳しい規定がありません。
1997年に、臓器の移植に関する法律ができ、9条に死体から摘出した臓器を移植術に使わなかった場合には厚生労働省令に規定する方法によって処理しなければいけない、と書いてあります。その厚生労働省令の第4条には、移植術に使わなかった場合には焼却して処理しなければいけないということが書いてあります。
つまり、臓器として移植用の臓器として提供されたものが移植に使われなかった場合に、それを研究に転用することは現在ではできないということになっています。
他方、亡くなられた方からの組織の提供に関しましては特に法律がありません。そのため、臓器の移植に関する法律には運用に関する指針、ガイドラインがあり、第14条に組織の移植に関する取り扱いが書いてあります。
本人または遺族の承諾があること、それが社会的・医学的見地から適正であれば本人の生前の意思、あるいは遺族の書面による承諾をもって組織を摘出してよいとされています。この場合には組織を移植に使わなかった場合には特段の規定はありません。
したがって、移植用の組織として提供された組織に関しては、使わなかった場合には遺族の書面による承諾があれば研究用に転用しても問題ないと解釈できます。
これが現在の我が国の対応です。
臓器の場合は厚生労働省令の規定により焼却しなければいけない、ということになっておりますが、本人または遺族の書面による承諾がある場合には研究に転用してかまわないというように厚生労働省令の改正を行えば、研究に転用することができるということになります。
すでにお話ししましたように組織は、現在でも既に研究に転用ができます。
本来、臓器を提供される場合にどういう動機でご遺族が提供されるか、ということになりますが、本人の意思を活かしたい、あるいは、本人の意思を尊重して、何らかの形で社会に役立てたい、社会貢献をさせたいというご遺族の希望、さらに医学の発展のために、あるいは他の病気の患者さんのために役立てたいというようなお気持ちが大きな動機になっています。すなわちご本人の意思やご遺族のご希望・要望を原点に立ち返って活かすために、移植に使えなかったら、それを焼却してしまうということではなく、多くの患者さんの治療に役立てるような研究にも用いることができるというようにすべきだと、そのような時代が来ているのではないかと考えております。

■Part2:「外科手術の現場に協力を求めるための方策について」
手術で摘出された標本には、法的な特段の規定がありません。実際には手術で摘出された組織は様々な検査に使われております。これは、研究というよりもその人の治療に関連した検査ということになると思います。ただし、本人以外の治療や成果の応用ということになると、それは検査ではなく研究的な意味をもってきます。
そういったことも含めて、今の段階でも手術で摘出された標本をご本人の承諾があれば、それを研究に転用するということが可能です。手術で摘出されたものが誰に帰属するのかという問題がありますが、通常は患者さんご本人に帰属すると考えられます。ですので、その方の承諾を得られれば、研究に使うことは可能となります。
しかし、あくまで社会的にも医学的にも正当であるという範囲内で行われることになると思います。これに関しましては今後も徐々に広がっていくのではないかと考えています。

■Part3:「今後のHABについて」
現在のHABは外国から輸入した組織や細胞を研究に用いるための仲介役を果たしています。今後の我が国における医学的な研究のための重要な橋渡しの役割を果たしていると思います。しかし問題は、日本人の組織と外国の方の組織とは違うことです。遺伝子等、様々な点が異なっています。日本人のための治療を研究するためには、もちろん外国からの組織・細胞も必要ですが、それに加えて日本の方々からの提供も必要なのではないかと考えます。
そのためには、3つの流れがあります。一つは、バイオバンクです。手術で摘出された標本を、ご本人の承諾を得て研究に転用していくという考え方です。すでにバイオバンクは日本では数カ所運用されております。
もう一つは、臓器の移植のために摘出された臓器を移植に使えなかった場合に、研究に転用できるようにしてはどうかという考え方です。これは、臓器の移植に関する法律の施行規則(厚生労働省令)を改訂して、移植に使われなかった場合には研究に用いることができると改正すれば、今後可能になります。
さらにもう一つの方法としては組織移植のために提供された組織の転用があります。組織の移植用に摘出された組織を研究に転用することは今でも行われていますが、臓器の移植に関する法律が改正されて以来、組織の提供が減少しています。例えば皮膚の移植は非常に重要で、重傷のやけど(熱傷)の患者さんの救命率を上げるには不可欠です。それが現在、提供が少なくて非常に困っているという状況で、皮膚をはじめとした組織の提供を今後増やしていかなければいけません。
現在、臓器移植ネットワークで臓器の提供に関する手続きや斡旋が行われていますが、組織は臓器とは別のコーディネイターにより行われています。このように臓器と組織で分かれているのは日本だけで、諸外国では、組織も臓器も全部、一体化して行っております。今後は日本臓器移植ネットワークで臓器だけではなく、組織の提供についても一体的にやっていただいて、組織の提供を増やしていただきたいと考えます。そうすれば、移植に使えなかった場合に、研究に用いて多くの患者さんの治療のために役立てることができるようになると思います。
厚生労働省令を改正して、移植用の臓器の研究への転用が可能になれば、移植に使用できない場合は、亡くなられた方から善意で提供された臓器・組織を、病気と闘っている多くの患者さんのための研究に役立てていくという、本来の尊い善意の意思を活かせることにもなります。
上記のように組織の研究への転用には三つの流れがあり、これらの流れをどういうふうに調整し、推進していくかということが重要だと思います。HABは上記の三つの流れをネットワーク化してまとめるような立場でやっていったら良いのではないかと考えております。

※ヒト試料を研究に転用する場合は本人または家族(遺族を含む)の書面による承諾を得ています。

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第2回 東海大学医学部消化器外科 中郡聡夫先生

収録日:2017年6月3日

東海大学医学部消化器外科 中郡聡夫先生が膵臓がん治療の現状と将来について語ります。
3部構成になっており、それぞれ以下のテーマで語っております。

Part1:「膵臓がん患者はなぜ増えてきているのか」
Part2:「膵臓がん治療の現状-なぜ治療が難しく、予後が悪いのか」
Part3:「膵がん治療の将来展望」
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各動画の要旨は以下になります。
■Part1:「膵臓がん患者はなぜ増えてきているのか」
膵臓がんの患者さんは増えています。日本では年間1000人ぐらい、死亡数が毎年増えています。
2017年は日本では3万4000人ぐらいの死亡数が予測されています。
増えている原因ですが、ハッキリとわかっていません。高齢化が一つの原因としてありますが、根本的な理由はわかっていません。糖尿病の患者さんが増えていることは、直接的では無いのですが関連しているのではないかと思っています。
しかし、遺伝子の因果関係など、直接的な膵臓がんの原因はあまりわかっていないというのが実情です。

■Part2:「膵臓がん治療の現状-なぜ治療が難しく、予後が悪いのか」
膵臓がんは非常に治療が難しい病気と言われています。
難しい一つの理由に診断の難しさがあります。つまり見つけにくいと言うことです。
膵臓の場所が胃の裏側の奥にあるため、症状が出にくく、症状が出た段階ではかなり進行した状態になっています。
見つかった段階で手術ができるのは全体の2割ぐらいになります。残りの8割は見つかった段階で手術ができないくらいに拡がっているという状態です。
もう一つの治療の難しい理由は、膵臓がんには抗がん剤が効きにくいというものがあります。
最近は徐々に膵臓がんに効く抗がん剤が開発されてきていますので、将来的には希望を持てる状況にはありますが、抵抗性の強いがんといえます。
それから、三番目の理由は手術後の再発率の高さです。
胃がんや大腸がんなどと違い、手術で治る人は4人に1人で、残りの3人は再発してしまいます。
その理由は、膵臓の周りにゲリラみたいにがん細胞が残ってしまっていたり、肺や肝臓などの遠いところに小さな転移が起こったりするためです。
そういった理由から、がんの中でも肺がんと膵臓がんが治療が難しいがんということになっています。
ただ、先ほども述べたように新しい抗がん剤が出てきており、5年生存率も2005年ぐらいは10~15%ぐらいでしたが、現在は10%ぐらい上乗せされています。
最近はさらに良い成績も出てきておりますので、今後は期待できると思います。

■Part3:「膵がん治療の将来展望」
今一番期待されている治療法は、化学療法です。
フォルフィリノックスといって4種類の抗がん剤を集めて投与する方法やゲムシタビンとナブ・パクリタキセルという2剤を併用投与する治療法等、抗がん剤を複合的に併用して投与する新しい治療法が進歩してきており、治療成績が非常に改善しています。
手術できないような患者さんでも抗がん剤治療によって腫瘍が縮小し、手術できるようになります。また、術後の患者さんに使うことで、非常に長く生きていけるようになります。
最近はこのように治療法が進歩しており、手術と化学療法を組み合わせる手法が非常に期待できると考えております。

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第1回 HAB研究機構理事長 深尾立

収録日:2017年4月12日

HAB研究機構理事長 深尾立がHAB研究機構のこれまで、現在、今後について語ります。
3部構成になっており、それぞれ以下のテーマで語っております。

Part1:「これまでのHABのあゆみについて」
Part2:「現在のHABの取組や活動について」
Part3:「今後のHABについて」
※動画左上のメニューボタンをクリックすると、再生する動画を選択することが出来ます。

各動画の要旨は以下になります。
■Part1:「これまでのHABのあゆみについて」
従来、人に使う薬の薬物動態を調べるために動物の細胞や動物実験を行って、薬理効果や副作用の有無などを調べていました。しかしそれでは思わぬ副作用が出たり、複数の薬の相互作用による副作用が出たりすることがわかってきました。
そこで、ヒトの組織を使って薬物動態研究が出来ないかと世界的に考えられるようになりました。
1990年のはじめぐらいから世界的にそのようなことが検討され、欧米では当局からガイドラインが作成されました。
日本でも同時期にヒト組織を使用した研究の必要性が叫ばれるようになり、産官学の方々が集まって検討が始まりました。そうした経緯を経て、1994年にHAB研究機構の最初の組織が生まれました。
日本ではまだ日本人のヒト組織を手に入れることは難しいだろうと考え、アメリカから提供を受けることを検討しました。アメリカでは1980年ぐらいからNDRIという組織が作られ、臓器移植に提供された方の様々な組織をいただいて、全米の研究機関に配布するという活動を行っておりました。そこでHABでは、NDRIと話し合い、一定の条件を満たした場合にヒト組織の提供を受けられるという関係を構築しました。

■Part2:「現在のHABの取組や活動について」
日本人の薬物動態を調べるためには、やはり日本人のヒト組織を使用して研究をする必要があります。
まずは、臓器移植に提供された臓器を研究用の試料として利用することが可能になる法的・倫理的検討を行いました。
そのためにHABではまず、薬学学会や医学学会に対してヒト組織を使用した研究の重要性を理解してもらうために学術年会と称した学会を年1回開催することにしました。
さらに、一般市民の方の理解も大変重要ということから、市民シンポジウムという活動も開催しております。
また、ニュースレターや市民新聞等の情報発信活動も行っております。
このような活動を通じて、日本人の臓器移植用に提供されたヒト組織を研究に活用できるような環境作りに尽力しています。

■Part3:「今後のHABについて」
日本人のヒト組織を合法的に倫理的に問題のまない形で提供できる社会にしていくことが今後のHABの一番の目的です。そのためにはまず、臓器移植用の臓器が使えなかった場合には研究用に使える環境作りがと必要と考えております。
ヒト組織を研究に使用することで、新しい薬の開発、発展に役立つということを多くの人に知っていただき、納得できるようにすることが大切だとHABでは考えています。

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