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HABの研究活動-供給するヒト組織について
HABでは会員の研究者に、米国National Disease Research Interchange(NDRI)との国際協定に基づき、ヒト組織の供給を行っております。
これらのヒト組織は、以下の3つに分類されています。
- ●脳死ドナー(Transplant)
- 脳死ドナーから摘出された肝臓や腎臓など、移植不適合と判定された場合で研究目的転用に同意がある場合は研究者に提供されます。
この場合、臓器は提供病院からHABに冷蔵で直接送付されてきます。
米国でも移植目的へのご提供も十分ではありませんので、研究に転用される数は多くはありません。 - ●心臓死ドナー(Autopsy)
- 研究者が希望する臓器、組織をNDRIのコーディネーターが連携病院の心臓死ドナーの遺族から研究利用に同意をとってご提供いただくものです。
冷蔵、凍結等が指定でき、比較的多くの検体のご提供を受けることが出来ます。 - ●手術ドナー(Surgery)
- 手術切除組織を研究目的にご提供を受けるものですが、ウイルス情報等のドナー情報は個人情報の保護のため、開示されません。
これらは研究者の皆様から申請されて、随時供給されています。
今までの供給実績は、肝臓(単離細胞含む)、腎臓、膵臓(膵島)、肺、皮膚、小腸、大腸、気管、泌尿器試料(膀胱、尿道など)、乳房、眼球、脳、爪、軟骨、骨格筋などがあります。
これらは、人種、性別、年齢、部位、処理、運輸方法などの条件の指定も可能です。
(指定条件などにより、供給までの時間がかかる場合があります)
NDRI Web site: http://www.ndriresource.org/
現在、HAB研究機構で取り扱っていないヒト組織をご希望の際には、当研究機構の倫理委員会による審査が必要となります。
この場合、前もってその試験計画が、貴施設内の研究倫理審査機関によって承認を得ている必要があります。
また、NDRIへもReview Board申請書類を提出するため、英文の書類も必要となります。
ご不明な点がありましたら、附属研究所までお問い合わせください。
HABの研究活動-ヒト組織供給までの流れ
●ヒト組織供給までの流れ (HAB研究機構正会員、賛助会員であることを前提としております)
- HAB附属研究所へお問い合わせフォームまたは電話にて問い合わせる供給希望試料の概要(目的、希望条件、数量、希望納期など)をお知らせください。
必要な手続き・手順などをご説明いたします。 - 研究者が申請書類(「研究用ヒト試料提供同意書(2部)※1」および「研究倫理審査承認証明書※2」)をHABへ提出
※2:所属される機関の倫理委員会における承認が必要となります。 - HAB研究機構内の審査
審査は申請された時に随時行われます。
理事長の諮問により倫理委員会による審査を行います。
使用を希望する臓器・組織により、倫理委員会会議に出席していただき「研究の必要性に関しての説明」を求める場合もあります。 - NDRIへ書類送付、審査
HAB研究機構内の倫理委員長の承認書と共にNDRIに書類を送付し、NDRI内のReview Boardでの審査をうけます。 - NDRIから供給開始
附属研究所に「ヒト試料供給依頼書」を提出頂き、承認を受けた「研究用ヒト試料提供同意書」に基づいた申請につきまして、試料を供給いたします。
ご希望の試料が搬入されましたら、「ヒト試料供給依頼書」にご記入頂いたご担当者様に附属研究所よりご連絡いたします。
手順3において、承認を受けた申請につきまして試料供給が開始されます。
提供同意書に基づいて、供給希望資料を付属研究所に供給依頼して下さい。
□ヒト組織供給依頼書
(同意書に記載されている期間、試料であれば依頼可能です。それ以外の試料もしくは期間が終了した場合は、再度「研究用ヒト試料提供同意書」をご提出下さい。)
HABの研究活動-ヒト組織供給についてのFAQ
- 誰でも供給が受けられますか?
- HAB研究機構の正会員、賛助会員のみ、供給申請受付および試料供給を行っております。
※会員手続きに関しては、HAB研究機構の会員ページをご参照ください。
- どんな組織・臓器でも供給が可能ですか?
- 上記にある、過去に供給実績のあるもの以外でも供給は可能です。(※特殊条件のものはNDRIに問い合わせをいたします)
こちらのリスト(PDFファイル)またはNDRIのサイトを参照のうえ、附属研究所にお問い合わせください。
- 書類を提出してからどれくらい待てば供給が開始されますか?
- 希望する臓器・組織や条件により、NDRIに在庫がないものもあります。詳細条件を提示して附属研究所にお問い合わせください。
- 組織供給に関してはどのような条件をつけられますか?
- 人種、年齢、性別、部位、処理状態、送付状態(冷蔵、冷凍)などの条件は指定可能です。
その他の条件など、詳しくはお問い合わせください。
- 組織供給の際にはどんな書類が添付されますか?
- ドナー情報、NDIRからの証明書(肝炎、HIVウイルス、梅毒陰性等)、研究目的使用に関するインフォームド・コンセントが添付されています。
また、現在附属研究所にて在庫として-80℃条件下で保管している組織や、組織抽出画分(肝ミクロソーム、S9、サイトゾル等)もございます。詳細はお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせ下さい。
HABの研究活動-HABって何?-ヒト組織提供のガイドラインについて
- 研究倫理の基礎知識
ヒトゲノム・遺伝子解析研究から、難治性疾患の標的分子が明らかとなり、様々な標的薬が開発されてきた。Precision Medicineの進展とともに、医学・創薬研究の場におけるヒト組織の研究利用はますます重要となってきています。しかし、日本ではこのような研究を積極的に進める態勢は十分に整っていませんでした。厚生科学審議会の答申(手術等で摘出されたヒト組織を用いた研究開発の在り方について―医薬品の研究開発を中心に―〔平成10年12月16日〕)に基づいて、外科手術時に切除された組織を保管し研究に提供するシステムは存在していましたが、到底研究の需要を満たすものとはなっていませんでした。早くから日本人のヒト組織の提供システムの確立を目指してきたHABは、移植に用いられなかった臓器を、遺族の承諾を得て、匿名化したうえでバンキングするシステムの構築を考えました。これは、海外で実際に運用されているシステムを参考にしたものですが、そのようなことは、「移植に用いられなかった部分の臓器」を焼却処理するとしている現行法(臓器移植法9条・同施行規則4条)の趣旨と相容れないとされ、実現に至っていません。
日本のヒト組織利用の研究態勢の遅れは、研究者の活動に対する社会的理解が十分得られていないことにもよります。今から10年前に、日本学術会議では、「ヒト由来試料・情報を用いる研究に関する生命倫理検討委員会」における審議を経て、大規模な公的ヒト試料バイオバンクの設立を国に要求するという「要望」を出す動きがありましたが、バイオバンクが「公共善」であることが示されていない、研究至上主義、功利主義的な科学者のエゴイズムに見えるという批判が強かったために、現実のものとはなりませんでした。さらに、2007年の「ディオバン事件」、2014年の「J-ADNI事件」など、臨床研究者の不正疑惑は、研究者への信頼を大きく傷つけることになり、ついに、臨床研究法が成立するまでになりました(平成29年法律第16号)。
わが国でヒト組織の研究利用を進めるためには、医学・創薬研究が人々の権利・福利と人間の尊厳のための営みであることについての日本社会の理解と支持が必要でありますが、そのためには、研究者が、基礎から臨床まで様々な研究を行うに際して、法令だけでなく倫理的ルールを遵守していることが必要であります。特に、固有の尊厳を有すると考えられているヒト由来試料を用いた研究については、事情はかなりセンシティブになっています。
以上のようなことから、HAB研究機構は、現在の法令、倫理指針の基礎・概要・適用についての情報を提供するために、HABのホームページに上智大学町野 朔名誉教授の協力を得て「創薬研究の基礎知識」を設けることとしました。- 医学研究に関する指針一覧(厚生労働省サイト)
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1 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針
2 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針
3 遺伝子治療等臨床研究に関する指針
4 手術等で摘出されたヒト組織を用いた研究開発の在り方
5 厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針
6 異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針
7 ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針
8 疫学研究に関する倫理指針
9 臨床研究に関する倫理指針
10 ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針
◎参考文献
町野 朔、ヒト細胞・組織の研究利用の倫理的・法的基礎、レギュラトリーサイエンス学会誌、vol. 6-1: 65-70 (2016)
バイオバンクの展開-人間の尊厳と医科学研究-(奥田純一郎、深尾 立共編)上智大学出版(2016)
HABの研究活動-共同研究
附属研究所では所定の手続きに基づいて、ヒト組織を用いた共同研究を行っております。
また、開発医薬品のみならず、市販後調査における相互作用試験もお受けいたします。
●ヒト組織を用いた共同研究について
協力研究という形を取らせて頂いております。
下記の研究倫理審査承認証明書、研究申請書に必要事項をご記入の上、郵送にてお申込ください。
※尚、当研究機構の学術年会もしくは機関誌紙面上にて、ご発表をお願いすることがあります。
・研究倫理審査承認証明書 (Wordファイル)
・研究申請書 (Wordファイル)
●その他の共同研究について
ヒト組織を用いた共同研究以外にも、協力研究をお受けしております。
詳しくは、附属研究所までお問い合わせください。
HABの研究活動-薬物相互作用データベース
薬物相互作用データベースとは、各製薬企業で既に市販している医薬品を対象として、同一のプロトコールで同一ロットのヒト肝ミクロソームを用いて各医薬品による標準基質の代謝の阻害を調べた結果を、データベース化したプロジェクトです。
1998年~2002年にHAB研究機構薬物相互作用データベース研究班として活動した成果をデータベース化し、社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム(JBiC)バイオDB事業および株式会社富士通九州システムエンジニアリング(FQS)にて無償公開しておりましたが、2015年6月末日をもちまして公開を終了いたしました。これまでご利用いただきまして、誠にありがとうございました。
HAB薬物相互作用データベースウェブサイト閉鎖にあたって(PDFファイル)横浜薬科大学 薬物動態学研究室 池田敏彦教授
薬物相互作用データベース研究班参加企業 (敬称略・五十音順・2002年6月時点)
味の素株式会社、エーザイ株式会社*、エスエス製薬株式会社、大塚製薬株式会社*、株式会社大塚製薬工場、小野薬品工業株式会社、科研製薬株式会社、杏林製薬株式会社、協和醗酵工業株式会社*、三共株式会社*、株式会社三和化学研究所、第一製薬株式会社*、大正製薬株式会社、大日本製薬株式会社、大鵬薬品工業株式会社、武田薬品工業株式会社*、田辺製薬株式会社*、東レ株式会社、鳥居薬品株式会社、日産化学工業株式会社、日本オルガノン株式会社、日本化薬株式会社、日本新薬株式会社、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、日本ロシュ株式会社、藤沢薬品工業株式会社*、明治製菓株式会社、持田製薬株式会社、山之内製薬株式会社
HABの研究活動-NDRIについて
National Disease Research Interchange(NDRI)は1980年に非営利機関として設立されました。その使命は、ヒト臓器、組織、細胞などを研究目的に供給するための業務を推進することであります。当初はPew Charitable Trustsの援助により設立されましたが、現在はNational Institutes of Health(NIH)のNational Center for Research Resources(NCRR)とJuvenile Diabetes Foundation International(若年性糖尿病国際基金)および他の私立財団からの研究資金により運営されております。
NDRIの設立のきっかけは、多くの研究機関で行われていた糖尿病研究に刺激されて、良質のヒト由来資源を糖尿病の研究に供給することでした。その後、NDRI から供給されるヒト組織の価値がこれらの研究機関で高く評価されることとなりました。これらの業務を通して、ヒトの正常および病態組織と臓器の最初の供給ネットワークが国内で設立され、今日までに2000人以上の医療研究者ならびに医薬開発研究者に供給しております。
今日のNDRIの成功のカギは、国内で最初のネットワークを確立したことであります。NDRIで取り扱っているヒト組織は、病院や全国60ヶ所以上あるOrgan Procurement Organization(OPO)、また、眼バンク、皮膚バンクおよび組織バンクなどから供給されています。また、NDRIは個々の研究者と相談しながら、いかにして効率的に組織を供給するかを日夜検討しています。
National Disease Research Interchange(NDRI)は1980年に非営利機関として設立され、NIHやさまざまな疾病関係の財団から資金提供をうけて運営しています。Organ Procurement Organization (OPO)や医療機関からヒト臓器・組織の提供を受け、医療や基礎研究まで幅広い研究に試料を提供しています。正当な医学的理由で移植に不適合と判定された臓器や、手術後の切除組織部分を研究者に供給して、有効利用しています。
●特徴
・30年以上の経験がありこれまでに120,000件の組織を供給しています。
・研究者の要望に応じて組織のドナー情報を提供できます。
・HTOR (Human Tissues and Organs for Research)プログラムは、NIHの研究費により支援されています。
・研究者の要望に応じて人種、性別、年令等を指定した種々のヒト組織の供給が可能です。
・皮膚バンク、アイバンク、組織バンク、病院、OPO(Organ Procurement Organizations)等からヒト組織を入手供給しています。
●実績
米国ではNDRIの試料を使って様々な業績があり、一流の科学雑誌で紹介されています。
NDRI Web site: http://ndriresource.org/for-researchers/search-publications
●参考リンク
NDRI Web site: http://www.ndriresource.org/