Index
おくすり情報 No.06 クスリをともだちに -クスリの種類について-(2005年5月発行)
おくすりは病気を治すお手伝いをします。現在、わが国には医療用医薬品という医師から処方されるおくすりは2000種類以上あります。
今回から、身近な病気に処方されるおくすりについてお話ししていきます。
■かぜ・インフルエンザのくすり■
身近な病気のひとつで、鼻水、のどの痛み、咳や発熱などの症状がでて、1年に数回かぜをひく人もいます。
医師は症状を診て、解熱鎮痛消炎薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、そして抗生物質、抗ウイルス薬などのおくすりを処方します。
●鎮痛解熱薬
熱を下げたり、のどや関節の痛みや腫れをおさえるおくすりです。
作用機序は、炎症や発熱の起因物質である「プロスタグランジン」という体内物質の生合成を妨げることによります。 アセトアミノフェン、ロキソニン、ポンタールなどがありますが、胃を荒らすことがあります。
●抗ヒスタミン薬
鼻水やクシャミの症状をおさえるおくすりです。
作用機序は、「H1レセプター」に作用してヒスタミンの働きを弱めることによります。 ポララミン、ペリアクチンなどがありますが、人によっては眠くなることがあります。
●鎮咳薬
咳のひどいときに処方されます。
痰の少ない乾いた咳に向きます。 脳にある咳中枢をしずめます。リン酸コデイン、メジコンなどがあります。
●抗生物質
かぜをひいた時に細菌による二次感染を起こすことがあります。
抗生物質は細菌の増殖を抑えるおくすりで、細菌が死滅すれば、炎症も治まるわけです。 鼻カゼや軽いカゼには必要ありません。ケフラール、セフゾン、クラビットなどがあります。
●抗ウイルス薬
ウィルスが原因であるインフルエンザには抗生物質は効きません。 インフルエンザウイルスを抑えるおくすりが、最近になって開発されました。 タミフル、リレンザがあります。
■胃腸のくすり■
胃の代表的な病気には、機能性胃腸症、胃炎、胃潰瘍などがあります。
一番多いのは機能性胃腸症です。胃の粘膜に異常がないのに、吐き気、もたれ、痛み、胸やけ、といった不快な症状で、 胃炎や胃潰瘍は、実際に胃粘膜に炎症を起こしているものをいいます。
胃の病気のおくすりは、たくさんあります。症状に合わせて、数種類のおくすりを処方することがあります。
●健胃薬
いわゆる「胃散」とよばれる薄茶色の粉薬です。 胃のもたれ、食欲不振、胸やけ、吐き気などの症状に昔からよく使われています。 胃酸を中和する制酸薬、食欲を増す生薬、消化を助ける消化酵素、痛みをとる成分が配合されています。SM散、AM散などがあります。
●胃粘膜保護薬
傷ついた胃の粘膜を覆うことにより、胃酸などから粘膜を保護する作用があります。アルサルミン、イサロン、マーロックスなどがあります。
●H2受容体拮抗薬
ヒスタミンを介する経路「H2レセプター」に作用して胃酸分泌を抑制します。 胃酸による胃粘膜への刺激が弱くなるので、胃炎や胃潰瘍の治癒につながります。タガメット、ガスター、ザンタックなどがあります。
●ムスカリン受容体拮抗薬
「ムスカリン」と呼ばれる受容体に作用して胃酸分泌を抑制するおくすりで、 胃酸による胃粘膜への刺激が弱くなるので、胃炎や胃潰瘍の治癒につながります。ガストロゼピンがこのタイプのおくすりです。
●プロトンポンプ阻害薬
最も新しい分類の薬で、上記のH2受容体拮抗薬やムスカリン受容体拮抗薬を上回る、強い胃 酸分泌抑制作用を持っています。オメプラール、オメプラゾン、タケプロンなどがあります。
おくすりミニ知識
○スイッチOTC薬
医療用医薬品として使用が認められている成分の中で、比較的副作用が少なく、安全性の高い成 分の一般用医薬品への転用をいいます。
最近、スイッチOTC薬が増加傾向にあり、イブプロフェン、シメチジン、ガスター、インドメタシンといったおくすりがOTC薬になりました。
○新薬とジェネリック医薬品
新薬を開発するためには、10~15年の長い研究時間と、数百億円という莫大な投資費用がかかります。 そのために新薬は一定期間、特許期間(20~25年)という形で保護され、開発メーカーによって独占的に製造販売されます。
新薬(先発品)の特許が切れると、他の製薬会社でも製造可能な薬となり、通常3~4年の期間と数千万円の開発経費をかけて ジェネリック医薬品(=後発品)が製造されるのです。
ジェネリック医薬品は、先発品と「薬の名称」は異なりますが、成分も効用も全く同じものであると厚生省が認可し た医薬品です。「ゾロ薬」などとも呼ばれます。