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おくすり情報 No.07 クスリをともだちに -クスリの種類について-(2005年10月発行)
おくすりは病気を治すお手伝いをします。現在、わが国には医療用医薬品という医師から処方されるおくすりは2000種類以上あります。
今回は身近な病気である「高血圧」で処方されるおくすりについてお話します。
●血圧とは●
血液が心臓から送り出され、血管を通るときに血管にかかる圧力のことを「血圧」と言います。
心臓は毎分60~70回ほど収縮と拡張を繰り返し、ポンプのように全身に血液を送り出しています。
病院で血圧を測るとき、上が○○、下が△△などといいますが、心臓が縮んだときに血液が送り出され、 血管に高い圧力がかかります。これが収縮期血圧(最大血圧)です。
反対に、血液を送り出した心臓が拡張して、血液を吸い込みます。 このときに血圧は最も低くなり、これを拡張期血圧(最小血圧)といいます。
●高血圧
収縮期血圧(最高血圧)140mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)90mmHg以上になると高血圧と診断されます。 日本人の高血圧の大部分は、原因がはっきりとわからない「本態性高血圧」です。
高血圧になりやすい遺伝的な体質に、塩分の摂り過ぎや生活習慣病の原因でもある、 肥満、過度の飲酒、喫煙、運動不足、ストレス、加齢などの要因が加わって発病すると考えられています。
●高血圧と合併症
動脈硬化症は、加齢と共に徐々に進行しますが、動脈の血管壁にコレステロールなどが溜まったり、 線維化が起こったりして血管が狭くなり、高血圧の原因となります。
高血圧症はとくに、心臓病(狭心症や心筋梗塞)に陥るケースが多く、 さらに、脳梗塞、脳内出血、糖尿病との合併症も大きな問題となっています。
高血圧症は、薬を飲めば簡単に治るという病気ではありません。
専門医の治療を受けながらも、患者さん自身が高血圧をよく理解し、ご自身で日頃の食事や適度な運動、生活習慣の改善といった 自分自身の生活をコントロールしていくことが重要です。
■高血圧のおくすり■
高血圧のおくすりは、医師が患者さんの体調や合併症の有無を診察した上で、もっとも合ったくすりを処方します。
したがって、すべての患者さんに一律に処方されるものではありません。 決められた量と回数を正しく飲むようにしましょう。
病院で処方される高血圧は、その作用の違いによりいくつかに分類されます。
●アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
血管を収縮させ、血圧を上昇させる作用のあるアンジオテンシンIIという体内物質の産生を抑えて血圧を下げるくすりです。 この種のおくすりは心臓や腎臓などの臓器の保護作用もあります。
(商品名)コナン、アデカット、ロンゲス、タナトリルなど。
●アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
最近になって開発されたおくすりで、アンジオテンシンII(上記)の作用を抑え血圧を下げるおくすりです。
(商品名)ニューロタン、ブロプレスなど。
●カルシウム拮抗薬
血管へのカルシウムの過剰な流入を抑え、血管を拡張させて血圧を下げるおくすりです。
(商品名)アダラート、ヘルベッサー、ペルジピン、カルスロットなど。
●ベータ遮断薬
心臓にあるβ(ベータ)受容体と生体構成成分にはたらき、心拍数を抑えることで血圧を下げます。
(商品名)テノーミン、アルマール、セレクトール、ケルロングなど。
●アルファ遮断薬
α(アルファ)血管を収縮させる交感神経の働きを抑えることで、血圧を下げるおくすりです。 他のおくすりと合わせて飲むことが多いです。
(商品名)デタントール、ミニプレス、カルデナリン
●降圧利尿薬
尿へのナトリウム(体内塩分)の排出を促し、血管を拡張して血圧を下げます。 他のおくすりと合わせて飲むことが多いおくすりです。
(商品名)ラシックス、フルイトラン、ダイクロトライド、アルダクトンAなど。
おくすりミニ知識
○おくすりの効き目と個人差
同じおくすりを飲んでも、よく効く人とそうでない人がいます。また、一部の人に副作用が出ることもあります。
この個人差は最近の研究によって、肝臓にあるおくすりの分解酵素の違いによるものであることが判明しました。 人によって、お酒に強い人、弱い人がいますが、これはアルコールを分解する酵素の個人差によります。 おくすりを分解する能力にも個人差があって、それがおくすりの効き目に大きく係っています。