特定非営利活動法人 Human & Animal Bridging Research Organization エイチ・エー・ビー研究機構

おくすり情報 No.08 クスリをともだちに -クスリと食品の相互作用-(2006年5月発行)

おくすり情報 No.08 クスリをともだちに -クスリと食品の相互作用-(2006年5月発行)

監修:佐藤 哲男(千葉大学 名誉教授)

日常摂取する食品の中には、栄養素とともに多くの化学物質が含まれています。 くすりと飲み合わせる事により、くすりの作用を弱めたり、異常に増強することがあります。
くすりと食品の相互作用には、大きく分けて効力に影響する場合と、薬の吸収、代謝などに影響する場合があります。




■薬効における相互作用■

●アルコール
アルコールには中枢抑制作用があるため、中枢抑制薬催眠薬と併用すると、作用が増強します。

●納豆
納豆菌は体内におけるビタミンKの生成を促進し、不慮の出血を止める際に必要なプロトロンビンの生成を促進します。 したがって、血栓予防のために用いているワーファリンの作用を弱めることがあります。 一方、納豆はナットーキナーゼという酵素を含むために、出血に必要な要素も持っています。

●グアバ茶抽出物
グアバ茶は糖尿病患者に有効といわれている特定保健用食品です。
その中にはポリフェノールが含まれており、これが血糖値の上昇を抑制するため、糖尿病治療薬と併用すると低血糖を引き起こすことがあります。(糖尿病について:参照)

●肝油、レバー
これらに含まれるビタミンD3により、血中のカルシウムが増加し、 心疾患に使用するジゴキシンにより不整脈を誘発することがあります。

●カフェイン
コーヒー、紅茶、緑茶に含まれるカフェインは、中枢興奮作用を持っているので、 催眠薬などの中枢抑制薬の効果を減少することがあります。

■代謝、吸収における相互作用■

●アルコール飲料
一般にくすりと併用するとくすりの吸収を促進するため効果が早く出ます
また、アルコールは腎臓の血管を拡張し、脳下垂体の抗利尿ホルモンを抑制するので、 結果的に利尿作用が出てトイレに頻繁に行く様になります。

●牛乳
ニューキノロン系やテトラサイクリン系の抗菌薬は、牛乳の中に含まれるカルシウムにより吸収が低下することがあります。
●タンニン、カフェイン
コーヒーや紅茶などに含まれるタンニン、カフェインは、 中枢作用薬であるハロペリドールクロルプロマジンなどと結合して難溶性の化合物を作るため吸収が低下します。
また、タンニンは鉄を含む増血剤とも結合して吸収を低下します。

●グレープフルーツジュース
この中に含まれるフラノクマリンはある種の薬物代謝酵素を阻害します。 しかし、同じ柑橘類でもオレンジジュースはその作用はありません。

以上の相互作用は、日常摂取する程度の食品の量ではそれほど心配することはありません。
しかし、同じくすりを長期間服用する場合には、医師、薬剤師に相談して下さい。

-糖尿病疾患のポイント-

(1)慢性的な高血糖により口渇、多尿、体重減少などの代謝異常と、 最小血管障害による慢性合併症(網膜症、神経障害、腎障害)などの症状を示します。
(2)病因としては遺伝的素因の他に、食事の欧米化、肥満、運動不足などの環境因子が指摘されています。
(3)糖尿病には次の合併症が知られています。
   急性合併症:感染症、意識障害
   慢性合併症:糖尿病性細小血管障害(網膜症)、大血管障害(心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、閉塞性動脈硬化症)

 ※更に詳しい病状はHAB叢書No.21「糖尿病:なぜ怖い?どう予防し、どう治療するか」をご参照ください。

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