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おくすり情報 No.12 ビタミンは副作用の少ないくすり・続 (2008年5月発行)
今回はビタミンB(VB)群を解説します。
VB群には8種類もあり、どれも水によく溶けるので、水で洗いすぎたり、煮汁を捨てると減ってしまいます。
欠乏症には共通点があり、ビタミン不足による疲れと皮膚炎が特徴です。
番号のついているもの(B1、B2、B6、B12)と、番号がなく固有名詞で呼ばれるものがあります。
そのうち、今は番号がなくなってしまったナイアシンは、 昔の番号のB3で呼ぶか、ニコチン酸とニコチン酸アミドに分けるべきとの考えもあります。
何故でしょうか。そんなことも含めて勉強してみましょう。
ビタミンB1(VB1 チアミン)
VB1は、炭水化物を代謝分解してエネルギーを生み出すとき大事な補酵素です。
慢性疲労やストレスを予防するビタミンです。 稀に不足するとエネルギー不足になり、脚気や神経炎にかかります。
ブドウ糖の点滴を受けているときに、VB1の投与を忘れると欠乏します。
有名ゴルファーがアリナミンを飲んで頑張るTV・CMはVB1の効能を表現したものです。 でも、できるだけ食べ物から摂るようにしたいですね。
1日摂取量に上限は特にありません。過剰分は尿に排泄されます。 1日の目安は、1~2mgです。
ご飯やパンを多く食べる人は、VB1も多めに摂りましょう。特に、心不全の人は多めに摂りましょう。
不足気味だと感じたら、穀類、豆類、豚肉に多く含まれています。
不足しているかどうかの見分け方は、椅子に座って、ひざ小僧を小槌でたたいて、足が跳ね上がれば大丈夫です。
ビタミンB2(VB2 リボフラビン)
どんなものを食べたときにも、エネルギーを生み出すのに必要な補酵素です。
細胞の再生に必須です。肉食の人はVB2の必要量も多くなっています。
普通に食事をしていれば欠乏症はほとんどありませんが、稀に不足すると細胞分裂の盛んな粘膜が、結膜炎、口角・口唇・口内炎、舌炎、皮膚炎(特に鼻唇溝と陰嚢)になりやすいです。
目で見て気づくので、こういう症状が出たら食べ物にも気を配りましょう。
1日摂取量の上限は特にありません。過剰分は尿に排泄されます。 1日の目安は1~2mg程度です。
ただ、向精神薬、抗うつ薬で減りやすいので注意が必要です。 くすりを飲んで皮膚があれてきたら気を付けましょう。
不足気味だと感じたら、ミルク、チーズ、卵白、レバー、緑色野菜、豆類を。
ナイアシン(ニコチン酸とニコチン酸アミド 昔はVB3)
昔からVB3 はニアシンともナイアシンとも呼ばれます。
正確にはニコチン酸とニコチン酸アミドの2種類ですが、薬店でも区別していません。 でも、目的によって使い分けが必要です。
VB3 が不足するとペラグラ(皮膚病の一種)になります。重症では死ぬことがあります。
軽症では、皮膚と消化器や神経に炎症を起こします。精神機能の維持にも必須です。
ビタミン作用としては、ミトコンドリアの酸化還元系に必要な補酵素で、1日必要量は10~20mgです。
ニコチン酸の大量摂取は高脂血症に有用ですが、副作用に皮膚紅潮と高血糖がありますので、1回に大量(100mg以上)の摂取は危険です。
しかし、ニコチン酸のサプリメントは売られておらず、総合ビタミン剤に含まれています。
食べ物からは摂りきれませんので、サプリメントを活用するとよいでしょう。
不足気味だと感じたらキノコ料理を食べたり、フレンチかイタリアンのコーヒーを取るとよいでしょう。
ビタミンB6(VB6 ピリドキシンとその仲間)
身体に必要な酵素のようなタンパク質を作るのに必要な補酵素で、 肉や魚を多く食べればそれだけ多くが必要です。
VB6の欠乏は稀ですが、タンパク質合成が盛んになる妊娠期間中や授乳期には特に大切です。 不足したときの症状は、VB2と似ています。
くすりのなかにはVB6の働きを邪魔するものがあります。 結核治療薬、経口避妊薬、パーキンソン病治療薬などを用いる時は、注意が必要です。
1日摂取量目安は1~2mgです。 ホモシステイン血漿で血圧の高い人は、VB6サプリメントが役に立つでしょう。
VB6はホモシステインの排泄を促して、動脈硬化を予防します。
不足気味だと感じたら、魚なら何でもOK。肉ならレバーに多く含まれています。
ビタミンB12(シアノコバラミン)
同じVB群の葉酸の代謝に必要な補酵素です。
赤血球のヘモグロビン合成に役立っています。
肉や野菜についた細菌がVB12を作り、それを動物が食べて吸収し、それをまた人が食べているのです。 ですから菜食主義者のなかには不足する人がいます。
その他に、胃切除、クローン病などの消化器疾患で見られることがあります。 欠乏すると貧血になります。
欠乏の初期症状は、舌炎、手足のしびれ、だるさ、集中力欠如、記憶障害、うつ状態などです。
1日摂取量の上限は特にはありません。1日の目安は2~3μgの微量です。
不足気味だと感じたら、貝類を食べましょう。多く含まれます。
葉酸(昔はVB9)
VB12と一緒に働いて、核酸を合成しています。
欠乏症は口内炎や食欲不振ですが、進行すると貧血、動脈硬化、血栓を増悪させ、 子供の場合は発育不全といった症状を招きます。
葉酸欠乏ではVB12の吸収も悪くなるので、貧血が益々激しくなるのです。 抗がん薬のうち葉酸拮抗薬を使うと更に悪化します。
予防のためには1日400μgの葉酸投与が有効とされています。
1日摂取量の上限は特にありません。1日の目安は250μgです。
不足気味だと感じたら、アスパラガス、枝豆、ホウレン草などの緑色野菜、アボガド。 また、マンゴーなどの熱帯果実に多く含まれています。
パントテン酸(昔はVB5)
脂肪のエネルギー代謝に重要な補酵素A(コエーとも呼ぶ)の構成要素の一つです。
善玉コレステロールを増やすともいわれています。
これが欠乏しても明確な欠乏症は出ませんが、 低栄養が原因の下肢の疼痛とけいれんが表われ、脱力感がともないます。
1日摂取量の上限は特にありません。 そして、通常の食生活をしていれば、まず欠乏症は起こりません。1日の目安は5mgです。
不足気味だと感じたら、卵と牛乳に比較的多いですが、偏食せずに色んなものをバランス良く食べましょう。
ビオチン(昔はVB7)
脂肪と炭水化物の代謝のなかで、脱炭酸反応をつかさどる補酵素です。
欠乏すると皮膚炎や舌炎を起こすことがあります。
生の卵白の食べ過ぎはビオチンの働きを妨害するので、欠乏症の原因になりますが、女優の森光子さんが1日に鶏卵10個食べてもビオチン欠乏症になった気配はありません。
長期の人工栄養補給でビオチン補充を怠ると欠乏症がでます。
遺伝的にビオチンが働きにくくなる病気も知られています。
1日摂取量は、人工栄養のときにはやや大目に必要で150~300μg、遺伝的障害の場合にはさらに大量の5~20mg。
通常の食生活をしていれば、まず欠乏することはありません。1日の普通の目安は50μgです。
不足気味だと感じたら、比較的多いレバー、豆類、卵黄を。
◎バランスのよい食生活とビタミンB◎
ビタミンBは、身体の中で炭水化物や脂肪からエネルギーを生み出すときに必要な 酵素の働きを助ける補酵素という役割をします。
ビタミンB は身近な食品に豊富に含まれているため、バランスのよい食生活をおくっていれば、不足することはないのですが、偏食ぎみで「何となく疲れる」といった場合、このビタミンBの不足が疑われます。
ビタミンBは、元気の素になるビタミンなのです。