特定非営利活動法人 Human & Animal Bridging Research Organization エイチ・エー・ビー研究機構

おくすり情報 No.16 上手な脂肪の食べ方/油には油を!(2010年5月発行)

おくすり情報 No.16 上手な脂肪の食べ方/油には油を!(2010年5月発行)

監修:岡 希太郎(東京薬科大学 名誉教授)

脂肪は、三大栄養素のひとつです。
食物から摂取すると小腸で脂肪酸に分解されて吸収されたあと、 腸内で再合成され、肝臓に集まり、全身に運ばれます。
1日の適正摂取量は50~70gで、摂取する総エネルギーの20~25%に抑えるのが良いといわれています。
しかしこの脂肪は、なかなか厄介なしろものです。
今回はそんな脂肪とのつき合い方をまとめます。

■必須脂肪酸(ω3系脂肪酸、ω6系脂肪酸)
必須脂肪酸とは、不飽和脂肪酸に属し、人間の体内では作れない脂肪酸のことです。
必須脂肪酸が不足すると、頭痛、疲れやすさ、体力不足、脳の働きの低下、血管の劣化、 免疫力の低下、関節のむくみ、不妊、流産、腎臓のトラブルなどが起こることが分かっています。

ω3系脂肪酸:
α-リノレン酸、EPA、DHAなど。 α-リノレン酸はEPA、DHAへと代謝されます。
主な作用として中性脂肪を下げ、血圧を安定させて血管を健康にしてくれます。
その他ω3系の効用として健康な免疫反応のバランスを助けたり、 関節や軟骨の健康、美肌、健康な心臓機能、神経系や脳の機能促進、うつ、炎症を抑えるなどの多才な効能があります。

ω6系脂肪酸:
リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸など。 リノール酸はγ-リノレン酸、アラキドン酸へと代謝されます。
アラキドン酸は生理活性物質の材料ですが、過剰摂取されると、凝固機能の亢進、炎症を起こし、痴呆症、知的障害、前立腺肥大などを引き起こす可能性があります。

ω3とω6系とは、相互に変化できないためそれぞれを摂る必要があります

■脂肪摂取量の変化
脂肪の摂取量は昔と比較して多くなっています。
ここ数十年で日本人の食事が、魚より肉類、油が多いなどの欧米化が進み、定着していったことにより、必要以上の脂肪が摂取されるようになりました。

さらに、動物や植物性油脂の摂取が増えているのに、魚性油脂の摂取量は増えていないことが分かります。
1970年代には、リノール酸(ω6系脂肪酸)がコレステロールを下げるといわれたこともあり、リノール酸の摂取が進められて、 著しく摂取量が増加しました。
しかし、リノール酸は一時的にコレステロールを下げますが、長期的ではないことが分かり、逆に最近では、リノール酸から代謝されるアラキドン酸の過剰量による体への悪影響が問題になっています。
改善するには、多すぎるω6系脂肪酸を減らし、少なすぎるω3系脂肪酸を増やして、バランスをとることが大事です。

■上手な脂肪の食べ方
ω3系脂肪酸を日常の食事から効率的に摂るには工夫がいります。
食品を選ぶときの条件は2つです。

①飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸を多く含んでいる食品を選ぶ。
 牛脂や豚脂は摂りすぎるとメタボの原因になる飽和脂肪酸がほとんどです。
 ω3系脂肪酸もω6系脂肪酸も入っていないので、少なめに食べること。

②不飽和脂肪酸の中でも、ω6系脂肪酸よりもω3系脂肪酸を多く含んでいる油を選ぶ。
 これは、同じ量を摂取したとしたらω3系脂肪酸よりω6系脂肪酸の代謝が優先して、
 その分ω3系脂肪酸が効率よく代謝されなくなるからです。
 したがって、ω6/ω3の数値が1より小さいほどよいでしょう。

以上の点から、シソ油、エゴマ油、亜麻仁油などの植物油、青魚さば、いわし、ぶり、あじ、さんまなど)をおすすめします。
さらに、選んだω3系脂肪酸を上手に摂る食べ方ですが、

①青魚を週に2回は食べる。
 余り熱をかけると脂肪が逃げたり、壊れたりするので、 脂が含まれている腹部と皮の裏側を残さず食べられる刺身かたたきが一番です。
②シソ油、エゴマ油、亜麻仁油などは、ドレッシングにして使う。
(長持ちしないので少量ずつ買って冷蔵庫にしまっておくのがよいでしょう。)
③ω6/ω3値が大きな油は避けた方がよいが、食べたければ少なめ(大匙1程度)にする。
④抗酸化作用のあるポリフェノールを同時に摂る。
 ω3系脂肪酸は体内で酸化されやすいので、抗酸化作用のある飲み物を飲むと、効果が長続きします。
 食後に、お茶、ウーロン茶、コーヒーなどを飲む習慣を身につけるとよいでしょう。


■身体に貯まる脂肪
脂肪は摂りすぎると、脂肪組織に貯まります。
昔、食べ物が不足していた時代には、いざというときに役立ちました。
今はいざというときがなくなって、貯まった脂肪は貯まりっぱなしで、貯まる場所が悪いと病気の原因になってしまいます。
また、脂肪組織は一種の内分泌臓器として、重要なタンパク質を作っています。
脂肪組織が作るタンパク質には善玉と悪玉のたんぱく質があり、このバランスが崩れると病気になってしまいます。

■医薬品になったω3系脂肪酸
持田製薬が閉塞性動脈硬化症・高脂血症の抑制薬として 1998年に市販したエパデールは、必須脂肪酸EPAのエチルエステル体です。
体内に吸収されるとEPAになり、ω3系脂肪酸として働きます。

エパデールは1日2グラム程度で有効に働きます。
くすりの量を増やさずに、うまく食事で補いましょう。しかし、身体を動かすこともお忘れなく。

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