特定非営利活動法人 Human & Animal Bridging Research Organization エイチ・エー・ビー研究機構

おくすり情報 No.21 アルツハイマー病にならないために(2013年5月発行)

おくすり情報 No.21 アルツハイマー病にならないために(2013年5月発行)

監修:岡 希太郎(東京薬科大学 名誉教授)

「長生きしたい」
それは人類の長い間の夢でした。
夢はついに実現しました。
しかしそこでまた新しい夢が生まれました。
「元気で長生きしていたい」
・・・
(この続きを読みたい方は → 「医食同源のすすめ(※amazonのサイト)」をご覧下さい)
アルツハイマー病(Alzheimer's disease; AD)は、人類が長寿と引き換えに背負うことになった現代病です。
人類の寿命が短かった時代には、ほとんどなかった病気です。
百寿が珍しくなくなった今の日本で、加齢に伴う高い罹患率は驚き以外に言葉がありません。


ADの年齢別発症率

[ アルツハイマー病の原因 ]
  ・加齢
  ・遺伝要因(詳細は略)
  ・2型糖尿病
  ・肥満
  ・高脂血症(特にコレステロール)
  ・高血圧
  ・頭部外傷
  ・ボケを気にする性格
  ・運動不足(市民新聞第29号を参照)
  ・たばこ

加齢と遺伝要因以外の原因が3つ以上重なると、AD発症のリスクとして5~10倍の高値になる。
頭部外傷のリスクは大きいので、年を取ってからの転倒には気をつけましょう。

■アルツハイマー病(AD)の病理と症状の経年変化

アミロイド病理:ADの特徴は何といっても脳にできる老人斑で、別名アミロイドβ(ベータ)またはAβプラークとも呼ばれるタンパク質の凝集体です。AβはADの直接の原因ではなく、AD臨床症状が現われる20年も前に出現し、ゆっくり増え続けるのです。

神経細胞病理:凝集したAβが刺激となって、脳神経細胞のなかでタウタンパク質が増殖すると、神経原線維という細長い紐状の物質が塊を作ります。すると、神経細胞は生きられなくなり、死んで脱落して脳の容積が縮小するのです。いわば脳の委縮です。

臨床症状:ADでは認知症に先立ってMCI(軽度認知障害)の時期が続きます。認知症には無効だった治験薬でも、MCIには有効だろうとの考えで、治験の再挑戦が準備中です。MCIの症状とは、自分では正常と思ってはいても、他人が見ると明らかに記憶障害がある状態のことです。この症状に早く気づいて、ADの進行を少しでも遅らせることができるようにすること・・・それが現在最も確かなAD対処法だと考えられているのです。

 



MCI=軽度認知障害
1.第三者が見て、記憶障害がある。
2.年の割には記憶障害が目立つ。
3.一般的な認知力は年相応である。
4.日常生活には差し障りない。
5.痴呆ではない。



■アルツハイマー病(AD)の予防と治療の可能性

新薬に期待:以前から、Aβができなくなるような新薬に大きな期待が寄せられていました。しかし、一旦認知症が起こってしまうと、新薬には何の効き目もありませんでした。
もっと早い時期に治療をはじめる必要があるとの考えで、MCI患者を対象に、新たな治験が企画されています。

今あるくすり:今あるくすりでも、MCIの時期に使い始めれば、認知症になる時期を遅らすことができると、考えられるようになってきました。

リハビリに期待:脳のリハビリは脳を使うことによってのみ効果的です。

漢方薬への期待:抑肝散はAD症状を緩和させるので、これもまたMCIの進行を遅らす可能性をもっています。

■先制医療とコーヒーの関係

先制医療:臨床症状が出始める20年も前に出現する老人斑、PETで早期発見の可能性を追究しているのは、放射線医学総合研究所の樋口真人先生です。
もしPET診断が可能になったら、その時点で治療をはじめるという先制医療の将来計画を描くのは、東京大学の富田泰輔博士です。

コーヒーの効き目:「中年時代に毎日コーヒーを飲んでいた人は、老後にアルツハイマー病になりにくい」との論文が発表されました。
コーヒーを飲む習慣が、長い時間を掛けてADの発症を遅らせたのだと考えられています。医食同源とも言えるコーヒーの効き目ではないでしょうか。

■アルツハイマー病との上手なつき合いかた

 ・ 認知症が出なければ、アルツハイマー病は恐くない。
 ・ いま認知症になったら、新薬は間に合わないと覚悟する。
 ・ 認知症になる前の、軽い記憶障害(MCI)に早めに気づく。
 ・ MCIの記憶障害は、自分では気づかないから、周りの人の話に気を配る。
 ・他人が変だと気づいてから、6年経つと80%が認知症になることを知っておく。
 ・外から見えない老人斑だが、15年でMCI、20年で認知症になることを知っておく。
 ・100寿者は、100%が認知症にかかっていることを知っておく。
 ・いまもうMCIかもしれないと思ったら、直ぐにでも脳リハビリを始めること。
 ・「全国物忘れ外来一覧」はインターネット(http://www.alzheimer.or.jp/?page_id=2825)で確認できます。

■今から始める脳のリハビリ

 ・楽しいことを色々考える。
 ・新しい歌を憶えたり、詞や俳句や格言を憶える。
 ・10年日記をつける。
 ・仲よしが集まって、他人と大いに語りあう。
 ・大きな声で歌を歌う。
 ・パソコンを使って文章を書いたり、情報を集めたりする。
 ・ストレッチとか散歩とかスポーツをする。
 ・高血圧、高脂血症は医者にかかって治しておく。
 ・毎日ペーパードリップコーヒーを飲む。

■アルツハイマー病にならない8箇条

 1.必ず禁煙
 2.アルコールはちょっとだけが効く
 3.野菜と果物を多めに食べる
 4.青魚を欠かさない
 5.BMI 22~25を維持する
 6.コレステロールと血圧は下げておく
 7.適度にスポーツを続ける
 8.1日1回ペーパードリップコーヒーを飲む

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