特定非営利活動法人 Human & Animal Bridging Research Organization エイチ・エー・ビー研究機構

おくすり情報 No.23 予防接種とワクチン (2014年5月発行)

おくすり情報 No.23 予防接種とワクチン (2014年5月発行)

監修:岡 希太郎(東京薬科大学 名誉教授)

赤ちゃんには病気の抵抗力(免疫力)が欠けています。病気になると命が危ないこともあります。赤ちゃんにとってワクチンの予防接種はお母さんの次に大事なのです。
予防接種は大人になっても必要です。インフルエンザもそうですし、海外旅行では欠かせません。西暦2000 年まで、ワクチン開発の歴史を見てみましょう。


ジェンナーの種痘播種

■ジェンナーとパスツール

● ジェンナー以前の天然痘予防
昔から英国には「牛の乳搾りをしている人は天然痘にかからない」という言い伝えがありました。
18 世紀の頃、農夫ジェスティンは若いころに牛痘(牛の天然痘)に感染したことがありました。彼の牧場の2人の乳搾り女性も牛痘の経験者でした。実際に天然痘が大流行したとき、ジェスティンと2人の女性は天然痘にかかった親戚の看護に明け暮れましたが、自分たちが天然痘に感染することはなかったのです。

● ジェンナーの種痘発明
牛痘を研究したジェンナーは、雌牛を意味するラテン語(vacca)に倣って牛痘をワクシニアと呼んでいました。そして1801 年までに少なくとも10 万人の英国人がジェンナーの作った牛痘ワクチンで種痘を受けたのです。
図中の絵はジェンナーが最初の種痘を施す様子です(1879 年、ガストン・メリング作、パリの国立医薬アカデミー所蔵)。 こうして牛痘を使う種痘は人々が恐れおののいた伝染病を予防する予防医学の始まりとなったのです。

● ジェンナー型ワクチンのコンセプト
ジェンナーの研究を解説すると、「天然痘に似ているが、天然痘よりずっと弱い病気を引き起こす牛痘を人に感染・発症させて、天然痘を予防することに成功した」ということです。
これに刺激されて、天然痘以外の病気でも、それに似た弱い病気を探す努力が続けられましたが、簡単なことではありませんでした。
およそ100 年の間、努力のほとんどが失敗に終わっていました。そしてやがてパスツールの時代がやって来たのです。

● パスツール型ワクチンのコンセプト
「強い病気を起こすものを、弱い病気を起こすものに人工的に変えて、ワクチンにする」。こうして科学としての免疫学が始まったのです。
パスツール型ワクチンのコンセプトはジェンナー型ワクチンを追い求めていた科学者たちに、発想の転換を求めたのです。狂犬病ワクチンは、日本では初めての予防接種となりました。
今なら当たり前と思われることでも、その考え方に最初に気づいた人は、天才に相応しい存在なのです。

■予防接種の種類

ワクチンで防げる病気から子供を守るために、定期予防接種を受けることが推奨されています。
最新のワクチンスケジュールをネットからダウンロードすることも可能です(http://www.know-vpd.jp/children/)。
お住まいの自治体窓口に問い合わせれば、 予防接種を受ける最善の時期、費用(任意予防接種の場合)、その他を詳しく知ることができます。任意ではあっても必要性が低いというわけではありません。

● 定期予防接種

● 任意予防接種

● 混合ワクチンの種類

● 大人も受けたいワクチンの種類

◆肺炎に備える(インフルエンザ、肺炎双球菌):インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって起こるウイルス性呼吸器感染症です。
また、肺炎は普通に体内や日常生活の場に存在している病原微生物によって起こる呼吸器の感染症です。高齢者や持病を持っている方などは、重症化し死亡する危険もあります。
お住まいの自治体によっては高齢者向けに予防接種の助成金制度があります。

◆海外旅行に備える(黄熱、狂犬病、破傷風、A型肝炎、B型肝炎他):外国では、日本にはない病気が発生しています。黄熱、狂犬病、破傷風など予防接種を受けることで、リスクを下げることができます。
必要な予防接種は、渡航先、渡航期間、健康状態、予防接種歴などによって異なります。事前にご自身がどの予防接種を受けるかは旅行会社等にお問い合わせください。(厚生労働省検疫所 http://www.forth.go.jp/

■ワクチンによる有害事象の歴史

予防接種は安全第一に進歩してきましたが、10 万人~ 100 万人に1人という範囲を超えて安全性を実現することは非常に困難なことです。
予防接種を行わない場合に、不運にも病気に罹ってしまう確率と、ワクチンによる有害事象を受ける確率を比較して、現実的な安全性を自分なりに理解することも大切なことです。
その歴史を表に書いてみました。多くは改善されてきましたが、現在も改善中のワクチンも残っています。
もし、予防接種を受けた後に不安に思ったときは、接種した医師にご相談ください。

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