HAB研究機構とは?About
欧米では、1980年代から実験動物と人間との種差、そして動物愛護の問題などから、医薬品等の開発研究現場ではヒト組織・細胞が使われるようになりました。そして2000年6月にクリントン大統領(当時)からHuman Genome Project(ヒトゲノム解析計画)が、そして2015年1月にはオバマ大統領(当時)からPrecision Medicine Initiative(最適医療推進)がそれぞれ国の重要な施策とされ、ヒト組織を用いた研究、さらに個々の遺伝子解析が医療の基盤研究として重要な位置を占めるようになりました。日本でも、同様な環境整備、そして研究活動を推進する必要があるとの考えのもと、産学官の有志によって設立された団体がエイチ・エー・ビー研究機構(HAB研究機構)なのです。
米国では糖尿病研究を推進するため、1980年に膵臓などの組織を医療機関から研究機関に供給するNational Disease Research Interchange(NDRI)というNPOが設立され、その後膵臓だけでなく他の臓器・組織・細胞も供給するネットワークを構築して供給体制を拡充しておりました。HABはこのNDRIを米国当局から紹介され、その際に担当官から「米国人から提供された臓器・組織を用いて優れた新薬が開発されれば、それは米国人も恩恵を受けることになる」という後押しを受け、NDRIと1996年に国際協力を締結することにより、米国人の臓器・組織を我が国の研究機関へ安定的に供給する事業を始めることが可能になったのです。
しかしながら医薬品の効果や安全性には人種差が知られており、日本人の組織・細胞を使った研究も重要です。そこで、HABでは設立時から専門家を招き法的・倫理的な問題を検討して報告書をまとめてきました。
国も数々の施策を行ってきておりますが、日本人の組織の供給については依然として制限された状態が続いております。HABはこの状況を打開するために、ヒト組織を用いた創薬研究の有用性について専門家だけでなく、一般の方々にも現状を訴え、皆様とともにわが国における将来の医療を考えていく団体なのです。
研究者・企業の方へのお知らせNews
一般の方へのお知らせNews
トピックスTopics
- 第27回HAB研究機構学術年会
「モダリティの多様性を支える 創薬研究、基盤技術」 -
第27回学術年会を大塚製薬株式会社 梅原健先生を学術年会長にお迎えして2020年5月21日(木)、22日(金)、23日(土)の3日間で開催することが決定いたしました。
HAB研究機構は、貴重なヒト組織を創薬研究に有効に活用することを目的に創設され、低分子医薬を中心に動物とヒトとの種差の検討やヒトへの外挿、薬物相互作用などの臨床予測に非常に大きな貢献をしてきました。近年、低分子医薬の開発は創薬標的が枯渇していることもあり難易度が高まってきていますが、その一方で、分子生物学の進展に伴い、抗体医薬、核酸医薬、遺伝子治療薬などの新しい創薬モダリティ(治療手段)の開発がさかんに行われております。どのモダリティを開発するにしても、臨床試験をするためには動物などを用いた非臨床安全性評価が必要であり、そこには低分子医薬と同様に動物とヒトとの間に種差が存在しております。また、ニューモダリティについては非臨床段階の情報は限られており、ガイドラインが十分に整備されていないモダリティもあるなど、各社、試行錯誤しながら安全性評価しているのが現状であります。
このような背景から、第27回学術年会ではテーマを「モダリティの多様性を支える創薬研究、基盤技術」とし、多様化する創薬モダリティについて、ヒトでどうなるか、動物からヒト、基礎から臨床をどのようにつなげるか、そのために必要な研究や技術は何か、について情報交換、議論して頂くこととしました。
1日目のシンポジウムでは、近年、アンチセンスやsiRNAなどの承認薬が出てきております核酸医薬と遺伝子治療薬などの再生医療等製品について、レギュラトリーサイエンス含めて最新の研究を紹介して頂き、また、どのように考えて開発していけばよいのか、討議して頂きます。2日目のシンポジウムでは様々なモダリティについて種差やヒト外挿への取り組みについて議論して頂くとともに、モダリティの開発に有用な研究ツールや技術を紹介して頂きます。招待講演ではアンチセンス核酸、遺伝子治療薬(CAR-T)、抗体薬物複合体(ADC)の治療効果や課題、今後の展望について治験に関われた先生方よりご講演して頂きます。ニューモダリティについて基礎・臨床での最新情報、現状や課題を知って頂き、患者さんにとってより良いクスリの創出に繋がればと期待しております。
組織委員一同、創薬や治療に携わる皆様に有意義な会になるよう企画、準備しております。ぜひ、沢山の方のご参加をお待ちしております。
2019年に新設された昭和大学上條記念館を会場に、以上のような魅力的な内容の学術年会を準備しております。講演演題詳細はFirst Circularにてご確認下さい。※その他詳細につきましての特設ページでのご案内は、2020年1月を予定しております。
多くの皆様がご参加されることを心よりお待ちしております。
- 2019年8月に湘南アイパークにヒューマンティッシュセンター(HTC)を開設しました。
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湘南アイパークは、日本初の製薬企業主導によるオープンでイノベーティブなエコシステムの醸成を目指して構想されました。この度、HABでは湘南アイパークへの入居を決定し、事務所を設置いたしました。

- 第35回HAB研究機構市民公開シンポジウム「白血病のあたらしい治療」
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2019年秋の市民公開シンポジウム「白血病の新しい治療」を慶應義塾大学薬学部芝共立キャンパス2号館記念講堂にて2019年11月2日(土)13時より開催いたしました。
白血病はリンパ球など白血球ががん化する血液のがんで、一部を除き原因は不明だそうですが、がんと診断された若年世代の患者データの分析結果からは最も多く15~19歳の罹るがんのうち約4分の1が白血病だと推測されています。
しかしかつては生存率が低かったものの、近年治療法が急速に進歩しており、若い世代の白血病は7割以上が治っているそうです。当日は約200人の皆様にお越しいただき、先生方の講演に耳を傾けておられました。
講演の内容は叢書として現在編集中です。今しばらくお待ちください。
- 「バイオバンクの展開」発行のお知らせ
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HAB研究機構では、2005年から2007年まで人試料委員会を計11回開催し、献腎移植の際にその他の腹腔内臓器・組織を摘出し、研究に供することについて、法律、倫理学の専門家を交え検討いたしました。委員会では、刑法、死体解剖保存法、献体法、臓器移植法等関係法やガイドライン等を検討し、心停止ドナーから腹腔内の組織を研究目的で提供していただくことは現行の法律下で可能であるとして、2007年10月に報告書、手順書を纏めました。
しかしながら、2010年の改正臓器移植法施行後に、移植ドナーの状況は大きく変化し、脳死ドナーが増えた一方で心停止ドナーは大きく減少してしまいました。また、脳死ドナーが増えたことで、移植に供されない臓器の数も増えてきました。 当研究機構では、このような現状を勘案し移植不使用臓器の研究転用に係る諸問題を整理する時期と考え、第2次人試料委員会を設置することにいたしました。2014年10月12日から2015年12月20日までの計10回開催し、報告書そしてマニュアルが完成いたしました。
この報告書を纏めるにあって、各委員から出された貴重な考察が意見書として纏められ、報告書・意見書を併せた「バイオバンクの展開」を、2016年12月20日に上智大学出版から発行いたしました。
- 日本毒性学会・佐藤哲男記念賞(学術貢献賞)の創設
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当機構名誉会長である佐藤哲男 千葉大学名誉教授のお名前を冠した佐藤哲男記念賞(学術貢献賞)が、日本毒性学会にて創設されました。
このたび日本毒性学会では、本会における佐藤哲男博士の国際的及び学術的貢献に敬意を表し、佐藤哲男記念賞(学術貢献賞)を設けることにいたしました。これまでの毒性学に関連する研究、後進の育成を含めた毒性学教育、毒性学分野における国際活動、あるいは毒性評価等に関わる技術開発において優れた業績をあげ、かつ日本毒性学会の発展充実に大きく貢献した本会会員に授与いたします。(毒性学ニュース Vol. 44 No. 1, 2019より抜粋)
- 事務所統合および東京事務局閉所のお知らせ
2016年5月26日に開催された第14回HAB総会にて議決しました通り、2016年9月30日をもちまして当機構は東京事務局(東京都文京区弥生2-4-16)を閉所し、附属研究所に業務統合することとなりました。
これを機に職員一同心を新たにして、さらに一層の努力をして参りますので、よろしくお願いいたします。HAB研究機構 事務局/附属研究所
〒272-8513 千葉県市川市菅野5-11-13 市川総合病院 角膜センター内
電話:047-329-3563 FAX047-329-3565
- HAB市民新聞 配布先募集
病院、薬局などにお勤めの皆様にご提案です。
HAB市民新聞を病院・薬局などで配布してみませんか?心と体を科学的視点から観た健康・病気についての連載を季節毎にお届けします。
病院・薬局以外の店舗でも配布してくださる皆様はもちろん大歓迎です。